うーん、ついに来たな。
いやー…来ちゃったなー
ちょっと前から悩んでてよ

実はシャルムーンデイん時からちょっと間貸し切ってた酒場でツケがたまりすぎててよ
おやっさん達は気にすんなって、また来た時でいいっていってくれたんだけど・・・やっぱりなあ
それに騎士団の方もちょいと気になるし・・・
だから、ちょっと残ろうかと思ってんだぜ！！

ま、返す金はこのままいけばすぐ返せそうだし。
返せたら皆の事おっかけるからよ！
まっててくれっとうれしんだぜ！！！
ぜってー･･･・・・また、会えるから・・・さ。

(本当の心情。何が言いたいかというとヤンデルってことだけ)



「後悔って、後からするから後悔っていうんだぜ」
 
昔友人が言っていたけど、自分の過去を振り返ればまさしくその通り。
いつだって後悔ばかりだった。
あの時こうしていれば、なんていうのはよくある事。
誰だってそうだろう？
…でも自分はその後悔にもう耐えられそうにない。

　だから、
　　　　　　だから、
　　　　　　　　　　　だからオレは、
　　
「っ！！」

走って逃げたくなる衝動に気付きハッとする。
大切なものを失う、そんな恐ろしさから逃げる為大切な人の元を去る
そんな風に逃げるのは、もう止めると決めたはず

けれどあの時から――小さな『密告者』の声を聞いた時から
オレはまた違う恐ろしさに悩まされている。

『他人から隠している欲望』　

自分のソレは、思っていた以上に恐ろしすぎて
『密告者』の囁く戯言だと思いながらも、絶望した。

今でも、覚えている



『あなたはひとりがさみしいのよね』
最初は少女の声

『お前さんをおいて死んでいった人のように』
次に年老いた男の声

『仲間がいなくなるのは耐えられないんだろ？』
そして溌剌とした青年の声

皆、オレをおいて逝ってしまった人達
大切だったのに、守れなくて
突然にオレの傍からいなくなった。

『おいていかれるのが恐いんだよね？』
『いい考えがあるぞ』
『ああ、一人が寂しいのは皆一緒だから』
『これしかないよね！』
『大丈夫！皆おまえと同じ気持ちだ！』
大好きな、大切な、優しい、多くの仲間達の声、声、こえ
密告者を潰してもまた生まれ、聞こえ続ける声
耳をふさいでもやまない

　　　　　　　　『『『『『『『『『『だからほら、』』』』』』』』』』
　　

　　　『『『『『『『『『『「皆一緒に死んでしまえばいい」』』』』』』』』』』


一拍おいて聞こえた言葉が、思っていた以上に近くでして

自らの唇が紡いだと気付いて、目の前が真っ暗になった

　　
　　　　　　　オレはあの時　何と言った？


ハッとした時にはまた声が溢れ　オレを苛んだ

『そうだ！皆を殺してお前も死ねばいい！！』　
　　　　　　　　　『名案だね！すごいよ！それがいい！！』
　　　『大丈夫、皆一緒だから』
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『ええ、恐くないわ。大丈夫よ』
　　　　　　　　　　　『安心して殺してください』

　　　　　　　　　　　　　　　　『　ほら　』

　　　　　　　　　　　　　『『『『　ほら！　』』』』　

　　　　　　『『『『『『『『　ほら！！！！！！　』』』』』』』』

　　やめてくれ

　　仲間達の声でそんな事を言うのは

　　オレは何てことを

　　ああ　オレは　オレは　　　　私は--------



あの後、仲間の声に正気を取り戻し
何事もなかったかのように戦場へむかった

それでも、声は耳に残っている


もしアレが、自分の欲望であるとすれば　恐ろしい

いや、アレは密告者の吐いた悪意ある言葉だ

「･･･・・・オレは、」

負けては　いけない！

「オレは、そんな事　望んでいない！！」


強く言った瞬間、心の重たさが少しマシになったような気がする

「オレは！絶対！そんな事望まない！！」

鏡の中の自分に言い聞かせ、頬を叩く

パシン、と気持ちのいい音が響いて　オレの頭をクリアにした


　もう、大丈夫。
　少し休んでから、皆の後を追うだけだ
　またすぐに会える


未だ霧のすべてが晴れたわけじゃない
でも、それでも
やっぱりオレは　前を見て歩いていきたいと思うんだ
寄り道をしても、ふらついても、立ち止まっても
信じた仲間の元へ行きたい


オレはもう、大丈夫だから。
ただ少し、休むだけ
また皆と肩を並べて歩けるように。